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毎週金曜〜イワモトサロン〜vol 44

70億人のフォロワーの皆様、おはようございます、こんにちは、こんばんわ。

金曜 岩本康平の ~ イワモトサロン ~  でっす!

 

毎週 金曜、岩本康平の心に突き刺さった モノ、コト、ヒト、ウタ などなどをお届けするジャングルジム的実験サロン。

時に美容師として、時に一人の男として、想いを紡ぐ プレイグラウンドとなっております。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先日、古い友人と酒を飲んでいましたら、恋人とお別れをした言っていました。

 

 

 

僕にとって2人は親しい者同士のカップルだったので、青天の霹靂でありました。

 

 

 

 

 

 

 

 

なんでも彼は彼の筋を通すとか、また彼女は夜街の蝶に生まれ変わるとかで、お互いに別々の道を歩むことになったとのことでした。

 

 

おもて通りの商店街に掛けられた祭り提灯や、その下でわいわいと騒いでいる遊び人らしい男達や、居酒屋にきこえる昭和歌謡は、僕らに少しだけ夏の終わりを示していました。

 

 

 

 

 

 

 

友人は騒々しい居酒屋に煙草の輪を浮かべて彼女との思い出を話し始めました。

 

彼女のわがままな性格のこと、似たような名前の友達を覚えるのに骨を折ったこと、ふとした時にみせる寂しげな横顔のこと、会うたびにちがう綺麗な爪のこと、背中のあざが濃くなったと気にしていたこと、うずらの卵をかわいく調理することや、スパゲティをお箸でくるくると上手に食べること、などなど僕も知らなかった一面を聞かせてくれてその都度「わかった。わかった。」と丁重に応えますが、彼の心の中に埋め尽くされた記憶の、それはあらゆる思いのうちでもっとも深い名のない想いに沈んだ思い出のアルバムの ひとつひとつめくられて 言葉はとめどなく溢れるのでした。

 

 

 

 

僕は言葉を探していました。

 

 

 

 

 

振られた数の多い僕は別れの悲しみを癒す方法はただひとつだと考えています。それは時間薬しかないのです。とりわけ旅に出ることはさらなる特効薬。なぜなら、それは主観的な時間の流れを促進するものだから。

そこで彼に旅をすることをすすめすると、「 僕はどこで何をしていてもあの子の面影を見い出すんだ」「 旅先で最後に触れた彼女の濡れたチークを思い出したら君はどうしてくれるんだ 」と言ってききません。

このいくじなしに今は 何を言ってもだめなようです。

 

 

 

 

 

 

その夜、僕らは店のお客がまばらになるまで語り合っていました。

彼は ちょこの中に残った最後の酒をぐいとやると幾ばくか晴れ晴れとした微笑を浮かべて「 夢みたいだったよ 」と言っていました。

「 いいや、夢じゃないさ」と僕は言いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おもてへ出ると意地のわるい夏は、依然としてからだにまとわりつくような湿気と熱をその夜に閉じ込めていた。 酔っぱらった僕らは年甲斐もなく汗ばんだ腕を肩に絡め、千鳥足でふらふらとしながら、大声で陽だまりの詩を合唱しながら 駅まで歩いた。改札を抜けて何度も振り返るこの旅慣れない博多っ子を、僕は見えなくなるまで手を振って見送ると、いつの日だったか さも仲のよさそうにけたけたと笑って歩いていたあの二人を懐かしく思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いくつも奇跡が起こって タイタニックの真似をして遊んだ夜のことを僕は忘れないよ。

 

と言っていましたよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

いつか、また会えるといいね。