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毎週金曜〜イワモトサロン〜vol 57

70億人のフォロワーの皆様、おはようございます、こんにちは、こんばんわ。

金曜 岩本康平の ~ イワモトサロン ~  でっす!

 

毎週 金曜、岩本康平の心に突き刺さった モノ、コト、ヒト、ウタ などなどをお届けするジャングルジム的実験サロン。

時に美容師として、時に一人の男として、想いを紡ぐ プレイグラウンドとなっております。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先日、あるお客様がご来店されてシャンプーをしていると、その方からとてもいい香りがしました。

 

 

 

 

 

 

 

香水なのか、普段使われているシャンプーなのか、そのとてもいい香りは上品で優しくて それでいてどこか懐かしくて、僕にとっては遠い記憶を呼び起こされるようでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕の両親は今でこそ田舎から街の方へ出ることはほとんどなくなりましたが、僕が小さく両親が若々しい頃、毎週のようにおめかしをして( おめかしをさせられ )福岡天神や博多へよく出かけました。

 

 

一日中 父や母の買い物、それから 洋服のフィッティングに付き合わされて毎度 足が棒になるようでした。

 

 

 

そんなある回のお出かけでは、いつもため息混じりで付い歩く僕でも はっとときめくような気持ちになった雑貨屋さんがありました。

 

 

そこは天神地下街にあったお店で、まるで絵のように美しいお店でした。

 

 

赤や青の半透明なステンドグラス、形の風変わりな洋物の食器、美人の裸の彫刻、細かな刺繍の入った綺麗な織物など!

 

 

 

 

それらは自分よりもうんと背の高い棚に並べられており、父と母は気に入ったものを手に取って眺めたりしていて とても羨ましく思っていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の帰りの車中では、いつも不機嫌にしている僕でも あのお店は好きだった と言いうと父は上機嫌で「 うちの芋坊主はもしかすると将来芸術家になるかもしれん 」と言っていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ようやく家へ帰ると僕は弟たちとファミコンをして遊んでいたのですが、そこへ勿体ぶった顔をした母がやってきて「  きみたちにお楽しみがあるよ 」とお風呂場を指差して言いました。 

ファミコン全集中だった僕らは、母の唐突なサプライズに すぐさまお風呂場へ駆け出そうとすれば「 脱いでから行ってみたら 」とまた勿体ぶって言います。僕らは服を脱ぎ投げて、お風呂場へ走り、浴室の引き戸を全集中で開けてみると、そこには息をのむような光景が広がっていました。

 

 

 

 

真っ暗なお風呂場にたくさんのキャンドルが焚かれていて、浴室のタイルやガラスや水滴に 火のあかりがちらちらと瞬き、さらに 目を凝らしてよく見てみるとお風呂のうえには まるで夏の入道雲のような大きな泡がいくつも浮かんでいて なかが見えないほどです。そこらじゅうから 上品で 優しくて とてもいい匂いがしています。

 

 

 

 

 

 

 

ふしぎな感動でいっぱいになった僕らはいわずもがないっせいにお風呂へ飛び込んでみると、泡はお湯といっしょにめいっぱい溢れ出して浴室は泡だらけになりました。

 

 

 

 

 

母はあきれていましたが「 お湯をじゃぶじゃぶするとまた泡ができるよ 」と言って扉をしめていなくなりました。僕らはばた足をしたり平泳ぎみたいにしたりしてじゃぶじゃぶと泡作りに精をだして遊びました。

 

 

 

 

 

 

お風呂からあがると僕は どうやってこの泡風呂を創出しえたのか母に尋ねてみると、そもそも泡風呂の素というものがあって しかもそれは午後に僕が気に入った地下街のお店で買ったとのことで、なるほどさらに嬉しくなりました。

 

泡風呂の素のボトルを見せてもらうと、西洋のお洒落なパッケージで しかも、その大きなボトルの残量を確認すると あと100回ぐらいは堪能できそうでした。

 

 

ところが、その後は100回どころか4回ぐらいしか泡風呂をしてもらった記憶しかなく、大人になって振り返ると、泡風呂の素は子供たち用というわけではなく、母が子供の寝静まった夜に一人で、いや、もしかするとそれは時々 父と、ロマンティックな時間を過ごしていたのかもしれないなと考えていました。

 

 

 

 

 

 

 

ときどきふとした瞬間に思い出します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我らが Imakuma salon も皆様へ

ヘアデザインを通して そんな うっとりするような体験や時間や空間を創れたらなと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

若々しい父と母が あの頃住んでいた小さなアパートの とても小さな浴槽から

子供の寝静まった夜、泡と一緒に仲良く顔をだしていたと想うと

 

今は 微笑ましく感じています。