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毎週金曜〜イワモトサロン〜vol 32

70億人のフォロワーの皆様、おはようございます、こんにちは、こんばんわ。

金曜 岩本康平の ~ イワモトサロン ~  でっす!

 

毎週 金曜、岩本康平の心に突き刺さった モノ、コト、ヒト、ウタ などなどをお届けするジャングルジム的実験サロン。

時に美容師として、時に一人の男として、想いを紡ぐ プレイグラウンドとなっております。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

平成最後の日、僕はお客様と小学校の頃の給食についてお話をしていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕の小学校では小学6年生の最後のお昼、いつもの給食ではなく、生徒自らが献立を作り、調理し、食べて、給食を作ってくれている方たちの苦労を体感しようというイベントがありました。

 

 

 

 

 

肝心の献立ですが、クラス会議の際 様々な要望が寄せられました。

 

 

 

 

焼きそばを作ろう! 炊き込みご飯を作ろう! 生姜焼き定食を作ろう! カレーを作ろう! などなど くだらない案ばかりが上がっておりましたので、僕は紅一点 クレープを作ろう!と ごりごりにごり押ししました。

というのも、当時 博多の方でキャナルシティーというお洒落商業施設がオープンし、僕は両親に連れられ行ったのですが、その時行列に並んで食べたクレープの感動をどうしてもみんなに伝えたかったのです。

 

 

 

案の定 激烈な反対意見に見舞われましたが、様々な見地からクレープのおいしさ、素晴らしさ、それが我々にもたらすものを 口角泡を飛ばしつつアピールしました。

放課後には職員室まで行って先生に直談判しました。

 

 

 

 

 

 

 

そうして、ようやく6年1組 最後のお昼は、クレープに決定されたのであります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クレープを作る日の朝、自分なりの正装として、当時 非常にクールだったNikeのグレーのパーカーに ジャスコで買ってもらったハーフパンツ、足元はPUMAのサッカーソックスを履いてスポーティーにスタイリングし登校したのを記憶しています。僕にとってクレープは、それだけお洒落な食べ物だったのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところが、

 

 

 

 

 

 

 

家庭科室にて調理し始めて 途中で味見してみると、キャナルシティで食べたあの時の感動とは程遠い仕上がりで、納得のいくものではありませんでした。

他のクラスメイトは味見の際、未知なるふわふわ生地にバナナと生クリームでありますから それだけで鉄板ではありますので「 おお!クレープっておいしい!」 と舌鼓をぽんぽこ打っています。

 

 

 

 

各々お皿の上でかわいくデコレーションし、出来上がった生徒から教室へ戻っていくのですが、僕と親友の安藤くんは工夫と改良を重ねそのあくなき探求に終わりはありませんでした。結局最後まで家庭科室にいたのですが、ようやく完成した時には制限時間いっぱいいっぱい。しかし、納得にいく仕上がりとなり 2人で狂喜乱舞しながら家庭科室をあとにしました。

 

 

 

 

 

廊下の途中、安藤くんはトレーに載ったクレープをまじまじと見つめ「 このクオルティーはキャナル超えたかもしれんね。」と 言うので、すごく嬉しかったです。

 

そうして、間もなく教室に着こうかとした時、眼前にぽつりと黒い紐が落ちていて、僕はテンションが最高潮だったのでしょうか、なぜだかそのとき その紐を蹴飛ばそうとしたんですね。

 

すると、右足がうまいこと絡まって 転倒しました。

 

 

足が絡まりバランスが崩れかけた瞬間に、「こりゃあかんっ!」と 上体を返して持ちこたえようとしたのですが、それがかえって仇となり、まるでスローモーションのように見えていたのですが、両手から離れた トレー、皿、クレープ が 宙を舞うと無残に廊下へ散らばって、その上を 僕の背中が全体重ですり潰す形で着地したのでした。 

 

 

 

 

その時、僕はすぐに安藤くんを見たのですが、彼の 絵に描いたような開いた口を 今でも思い返します。

 

 

 

 

僕は 廊下でぐちゃぐちゃになったクレープの生き残りをかき集めて皿に盛ると騒がしい教室へ戻りました。

 

 

 

みんな瞬時に事態を理解したのか、水を張ったようにしーんとなって 皿の上に載った見たこともないようなクレープと ぐちゃぐちゃに汚れたNikeのパーカーを見ていました。とりわけ、元反対勢力の面子からは「 ざまみろ。」といった意思も含まれていたように感じました。

 

 

 

 

 

小学校最後のお昼の時間、世界中の不幸を一気に背負って神をも呪ってやりたい気持ちでいたのですが、近くにいた女子の田辺さんが「 康平くん、これ すこし食べる?」と自身の愛くるしいクレープを その時差し出してくれたのです。

 

 

 

 

 

 

その後、僕は彼女へ特別な感情を抱きました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

恋の始まりは、優しさから始まるのかもしれません。